価格の柔軟性とは、市場における価格が需要と供給の変動に応じて、どれほど速やかに、そして円滑に変化するかを示す考え方です。市場経済において、価格は資源を適切に配分するための重要な指標であり、需要と供給のバランスを調整する役割を担っています。価格が柔軟に動くことで、市場は常に均衡点を探し、資源の効率的な配分を促します。例えば、ある品物に対する需要が高まった場合、価格が上がることで供給者は生産量を増やし、需要を抑えることができます。反対に、需要が減った場合は、価格を下げることで消費者の購買意欲を高め、余った在庫を減らすことができます。価格の柔軟性は、市場参加者にとって重要な情報源となり、生産者、消費者、投資家は価格の変動を通じて市場の状態を把握し、合理的な判断を下すことができます。価格が固定されている場合、市場のゆがみが生じ、資源の非効率な配分や需要と供給のアンバランスを招く可能性があります。そのため、価格の柔軟性は、市場経済が健全に機能するために欠かせない要素と言えるでしょう。政府の介入や規制、または一部の市場参加者による独占的な行為によって、価格の柔軟性が損なわれると、市場の機能が低下し、経済全体に良くない影響を与える可能性があります。価格の柔軟性を高めるためには、市場の競争環境を促し、情報へのアクセスを容易にし、不必要な規制をなくすことが大切です。価格の柔軟性を理解することは、市場経済の仕組みを理解する上で非常に重要であり、経済政策を立案したり、企業の戦略を立てたりする際にも考慮すべき点となります。

価格の硬直性とは、市場で取引される物の値段が、需給の変化にすぐさま対応せず、しばらくの間、同じ水準を保つ状態を指します。本来、市場経済では、需要が増えれば値段は上がり、供給が増えれば値段が下がるのが基本です。しかし、現実には、企業が値段を変えるのに費用がかかったり、顧客との関係を大切にして値段を安定させたりするなど、様々な理由で値段がすぐに変わらないことがあります。このような価格の硬直性は、経済全体に大きな影響を与える可能性があります。もし需要が減っているのに値段が下がらないと、商品が売れ残り、在庫が増えてしまいます。逆に、需要が増えているのに値段が上がらないと、品薄になり、消費者は物を手に入れにくくなります。価格の硬直性は、市場の調整機能を妨げ、経済の効率を悪くする要因となるため、経済政策を考える上で重要な要素となります。