機関投資家の責任:日本版受託者責任原則

機関投資家の責任:日本版受託者責任原則

投資の初心者

日本版スチュワードシップ・コードって、なんだか難しそうな名前ですけど、一体何のことなんですか?

投資アドバイザー

そうですね。簡単に言うと、機関投資家と呼ばれる、たくさんのお金を持っている会社が、投資先の企業としっかり話し合って、その企業が成長するように責任を持って行動するためのルールブックのようなものです。

投資の初心者

機関投資家が企業と話し合うんですか?なぜそんなことをするんですか?

投資アドバイザー

はい、なぜなら、機関投資家は私たちのお金を預かって投資しているので、投資先の企業が成長することは、私たちのお金を増やすことにもつながるからです。だから、企業がきちんと経営されているか監視したり、意見を言ったりする責任があるんですよ。

日本版スチュワードシップ・コードとは。

『日本版受託者責任原則』とは、投資に関する用語の一つです。これは、機関投資家が、顧客や投資から利益を得る人のため、そして投資先の企業のため、両方の視点を持って行動する「責任ある機関投資家」としての役割を果たす上で役立つと考えられる様々な原則を定めたものです。この原則に沿って機関投資家が責任を果たすことは、経済全体の発展にもつながると考えられています。この原則は、2014年2月に金融庁に設けられた専門家による検討会で作成され、公表されました。企業年金に関わる団体では、企業年金連合会と9つの企業年金基金がこの原則を受け入れることを表明しています。それ以外では、186の資産運用会社や、年金の運用に関わる組織として、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会、国民年金基金連合会などが受け入れを表明しています(2018年2月19日時点)。

受託者責任原則策定の背景

受託者責任原則策定の背景

わが国の経済をさらに発展させるためには、株式市場の活性化が非常に重要です。その推進役として期待されるのが、機関投資家の皆様です。機関投資家は、お客様や利益を受ける方の資産を預かり、投資という形で企業を支える役割を担っています。しかし、これまでの機関投資家は、投資先の企業経営への関与を避け、短期的な利益を優先する傾向が見られました。それでは、企業の長期的な成長を促すことが難しく、株式市場全体の活性化にもつながりません。そこで、機関投資家がより積極的に投資先企業の経営に関わり、企業価値の向上を促すための指標として、受託者責任原則が設けられました。この原則は、機関投資家が「責任ある機関投資家」として、投資先企業の成長を促し、最終的にはお客様や利益を受ける方の利益に貢献することを目標としています。また、この原則は、機関投資家が投資先企業との建設的な対話を通じて、企業が抱える問題の解決や成長計画の策定を支援することを期待しています。このような機関投資家の積極的な関与は、企業経営の透明性を高め、不正行為を防ぐことにもつながると考えられます。さらに、機関投資家が長期的な視点を持って投資を行うことで、企業の短期的な業績変動に左右されない、安定的な成長を支えることができます。このように、受託者責任原則は、機関投資家、企業、そしてお客様・利益を受ける方の三者にとって、良い関係を築き、経済全体の成長に貢献することを目指しています

このテキストは、箇条書きで要点をまとめるのが最も適していると考えられます。図表で表現するには抽象的すぎる内容です。

受託者責任原則の概要

受託者責任原則の概要

受託者責任原則とは、投資を委託された機関投資家が、顧客や受益者のために最善の行動をとるべきという考え方です。この原則は、機関投資家が単なる資金提供者ではなく、投資先の企業の成長を促し、最終的に顧客や受益者の利益を最大化するという重要な役割を担うことを意味します。機関投資家は、明確な投資方針を定め、それを顧客に公開する必要があります。投資先の企業の財務状況や経営戦略を詳細に分析し、企業との対話を通じて、企業価値の向上に貢献することが求められます。株主総会での議決権行使を通じて、企業の経営を監視し、不正行為を防止することも重要な責任です。これらの活動状況を定期的に顧客に報告し、透明性を確保することも不可欠です。受託者責任原則を遵守することで、企業はより効率的な経営を行い、持続的な成長を遂げることが期待され、経済全体の発展に繋がります。

企業年金における受託者責任

企業年金における受託者責任

企業年金は、従業員の退職後の生活を支える大切な資金です。したがって、その運用には、長期的な視野を持ち、安全かつ効率的に資産を増やすことが求められます。企業年金基金が責任を果たすための重要な手がかりとなるのが、受託者責任に関する原則です。この原則に基づき、運用を委託する機関を選び、その運用状況をきちんと確認する必要があります。運用機関が責任を十分に果たしているかを見極め、必要であれば別の機関への変更も検討します。また、企業年金基金は、投資先の企業と対話を通じて、その価値を高めるように働きかけることも大切です。例えば、年金に加入している従業員の立場から、企業の経営戦略や労働環境について意見を述べることができます。さらに、これらの活動状況を従業員に定期的に報告し、透明性を保つことが重要です。従業員は、年金の運用状況を知ることで、退職後の生活設計を具体的に立てることができます。企業年金が責任を果たすことは、従業員の安心感を高め、会社への信頼を深めることにつながります。その結果、会社全体の生産性が向上したり、従業員が長く働き続けたりすることにも貢献すると考えられます。企業年金は、受託者責任の原則を守ることで、従業員の退職後の生活を支えるだけでなく、会社の価値を高めることにも貢献できる、とても大切な存在です。

要素 内容
企業年金の目的 従業員の退職後の生活を支える資金
運用における原則
  • 長期的な視野
  • 安全性
  • 効率的な資産増加
受託者責任
  • 運用委託機関の選定と運用状況の確認
  • 必要に応じた機関変更
  • 投資先企業との対話による企業価値向上
透明性の確保 運用状況の従業員への定期的な報告
従業員へのメリット
  • 退職後の生活設計
  • 安心感の向上
  • 会社への信頼
会社への貢献
  • 生産性の向上
  • 従業員の長期勤務

受託者責任原則の受入れ状況

受託者責任原則の受入れ状況

わが国における受託者責任原則は、多くの機関投資家に採用されています。特に、企業年金に関わる団体や主要な基金が受け入れたことは、その普及に大きく貢献しました。多くの運用会社もこの原則を受け入れ、責任ある投資家としての活動を強化しています。年金積立金管理運用独立行政法人などの公的年金基金も、長期的な視点での投資を実践しています。

これらの動きは、受託者責任原則が資本市場で重要な役割を担うことを示唆しています。しかし、中小規模の機関投資家では、原則の理解や実践がまだ十分ではありません。金融庁は研修会などを通じて、これらの機関投資家の取り組みを支援しています。機関投資家同士が実践事例を共有し、協力することも重要です。

受託者責任原則の普及は、資本市場の健全な発展、企業価値の向上、そして経済全体の成長に繋がると期待されています。

項目 内容
受託者責任原則の普及 多くの機関投資家、特に企業年金や主要基金が採用
主な推進者 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの公的年金基金、多くの運用会社
現状の課題 中小規模の機関投資家における理解・実践不足
金融庁の取り組み 研修会などを通じた中小規模機関投資家の支援
今後の展望 資本市場の健全な発展、企業価値の向上、経済全体の成長

今後の課題と展望

今後の課題と展望

我が国独自の受託者責任原則は、国内の資本市場の進展に大きく寄与する可能性を秘めていますが、その効果を最大限に発揮するには、いくつかの克服すべき点があります。第一に、機関投資家は、投資対象企業との対話を、より有益かつ実効性のあるものにする必要があります。表面的ではなく、企業の経営上の問題を共有し、具体的な解決策を示すことが求められます。そのためには、機関投資家自身が、企業の事業内容や業界の動向を深く理解する必要があります。また、機関投資家は、議決権の行使をより積極的に行う必要があります。企業の経営陣に対して、株主としての意見を明確に伝え、企業価値の向上に向けた行動を促すことが重要です。さらに、機関投資家は、受託者責任の実践状況を詳細に開示する必要があります。投資方針、対話の内容、議決権行使の結果などを透明性の高い方法で開示することで、顧客や受益者からの信頼を得て、機関投資家の責任に対する意識を高めることができます。今後は、受託者責任原則が、わが国の資本市場における共通の価値観として確立され、機関投資家、企業、そして顧客・受益者の三者が、協力し、より良い社会を築き上げていくことが期待されます。関係機関は、引き続き受託者責任原則の普及と定着を支援し、わが国の資本市場のさらなる発展に貢献していくことが重要です。

課題 具体的な内容
投資対象企業との対話
  • 表面的な対話ではなく、経営上の問題を共有し、具体的な解決策を示す
  • 企業の事業内容や業界の動向を深く理解する
議決権の行使
  • より積極的に議決権を行使する
  • 企業の経営陣に対して、株主としての意見を明確に伝える
  • 企業価値の向上に向けた行動を促す
受託者責任の実践状況の開示
  • 投資方針、対話の内容、議決権行使の結果などを透明性の高い方法で開示する
  • 顧客や受益者からの信頼を得る
  • 機関投資家の責任に対する意識を高める