
信託の根幹を守る:自己執行義務とは
信託契約において受託者が担う重要な責務の一つに、自己執行義務という原則があります。これは、受託者が信託された財産の管理や運用などの事務を、自らの責任において遂行しなければならないという考え方です。受託者は、委託者から財産を託された以上、安易にその業務を他者に委ねることは許されません。信託は、委託者が特定の目的のために財産を受託者に託し、受託者がその目的に沿って財産を管理・運用する仕組みです。委託者は、受託者の専門的な知識や誠実さを信頼して財産を託すため、受託者自身が責任をもって事務を遂行することが不可欠です。もし受託者が、委託者の意向を確認することなく信託事務を他人に委ねてしまうようなことがあれば、不適切な管理や運用が行われる可能性が高まります。これは、信託制度そのものの信頼を損なうことにも繋がりかねません。自己執行義務を遵守することで、受託者は信託された財産を適切に管理し、委託者の期待に応えることができるのです。